ジェネリックと聞くと安いが品質の悪い薬というイメージがあるでしょう。そもそも「ジェネリック」とは「ジェネリックネーム=日本語訳:一般名」から来た名称です。別名「後発品」とも言います。先発品が販売した薬剤は特許が切れるとどのメーカーも同じ薬理作用を示す薬剤を販売することができます。その一般薬剤名(ジェネリック)にちなんでジェネリック医薬品と呼ばれています。実はこのジェネリックネームは世界共通です。英文の処方箋を日本で書いてもらえば海外でも同じ処方を出すことが出来ますが、先発品の日本独自の名称は海外では通用しません。例えば降圧薬のアダラートという先発メーカー薬品は販売した会社が付けた名前で一般名ではありません。一般名は「ニフェジピン」で、現在この名称を多くのメーカーが共通して使用しています。後発品は昔からありました。昔の後発品は卸の値段と薬価(いわゆる売値)の差が先発品に比べて大きく医療機関の利益が大きいため、利潤追求目的に後発品を導入する施設が結構ありました。しかし、当時はジェネリックネームを用いず、名称も共通しておらず、先発品と類似した名前が用いられていていかにも「類似品」というイメージでした。名の知れない多くの薬剤メーカーがぞろぞろ発売するので「ゾロ品」と揶揄されました。この名残が現在、「ジェネリックの質が悪い」という通説につながっています。現在国内のジェネリック医薬品メーカーは徐々に市場を拡大しています。使用量の多い大学病院や大手総合病院でもジェネリックを積極的に採用するようになっているからです。先発品を出していた大手薬剤メーカーでも自社の先発薬品を後発品に払い下げて販売しているものもあります(オーソライズドジェネリック)。そのような状況でジェネリックメーカーにも競争が生まれ、品質の良い物が求められる時代になりました。それでも医師や患者の間では「ジェネリックの効果は先発品より低い」「ジェネリックにしたら副作用が出た」というネガティブな意見は多くあります。薬価が先発品の40-50%という安さも「安かろう悪かろう」というイメージにつながっているように思われます。しかし、薬価が低くなるのは開発費がかかっていないためで、原材料が安いわけではありません。先発品と後発品の違いは主に添加物によるものです。主成分の容量が同じでも添加物の成分により吸収や代謝などが異なることもあり得ます。逆に先発品より効き過ぎることもあり得ます。副作用も先発品の方が頻度が低いとは言えません。いずれにせよ我々医師の目標は薬の種類に関わらず患者さんの症状やデータを正常にコントロールすることです。薬剤に対する反応は患者さんごとに異なり、経過を追って診療しながら薬剤を調整しなければならない点では先発品も後発品でも変わりません。当院では後発品が出ている薬剤については90%後発品で採用しています。先発品から後発品に移行した患者さんも多くいますが、そのためにデータが悪化したという患者さんを見ません。しかし、どうしても始めから先発品が欲しいという患者さんには院外薬局処方箋で先発品処方を出しています。しかしこれらの先発品もやがて薬価が下げられるとメーカーが発売を中止し、新薬のみが先発品として処方されることになるでしょう。
次回のテーマは「最近の新薬や先進治療 -光と影-」です。