医療現場と言えば主役は高齢者です。ご存知のようにこの高齢者の割合が年ごとに増加しています。いわゆる少子高齢化社会ですね。高齢者は若い人たちより明らかに多くの病気を持っているので医療費が年々増加するという問題に直面しているのです。2016年の国民医療費は42兆円で20年前より+14兆円、10年前より+9兆円増加しています。特にこの10年の増加が著しい。医療費とは別に介護費用など社会福祉の費用も同時に増加します。国民医療費/国民所得の割合もこの20年間に7.3から10.8%に増加しました。ある知人が冗談で「日本に金(ゴールド)がでれば解決できる」と言っていましたが、日本は石油もダイヤもゴールドも出てきません。とにかく実力で外貨を稼いだりもの作りをしたりしないといけません。しかし、この膨れあがる医療費を稼ぎ出す若者の割合が減少しているのが実情です。アベノミクスのように日銀で紙幣を刷ってばらまくのは限界があるでしょう。そのような状況で医療費は今後間違いなく削減されていくでしょう。別の言い方をすれば新しい治療や技術を導入する代わりに既存の医療が縮小されていく可能性が高いと思われます。厚労省は今後以下のような対策をとることが推測されます。
- 高齢者医療費の負担増
- 在宅医療の推進
- ジェネリック医薬品の徹底普及
- 院外調剤関係の診療報酬見直し
- 同一多重医療の制限(紹介無しで別病院の同じ科をハシゴすることの制限)
- 新薬や先進治療導入への厳しい認可姿勢
- エビデンス(証拠)に基づく医療の推進 (→既存医療への厳しい査定)
- 風邪などの日常疾患医療の査定や一部有償化
- 救急車の有償化
まだいろいろあるでしょうが、我々の業界内では以上のような対策が予想されています。しかし、このような対策をすべて悲観的に見る必要はありません。こういう状況だからこそ医療を見直すきっかけになるのです。
私は日常診療をしながら現在の医療の現状に多くの疑問を感じることがあります。その疑問をいろいろと紹介しながら、自分が診療の中でどのように実践しているか、これからどうしたら良いのか、常日頃考えていることをこのコラムに書き綴ろうと思います。
次回は「院外薬局は何が問題か?」をテーマに語ります。